2022年3月6日日曜日。市立吹田サッカースタジアム(通称:パナソニックスタジアム吹田)で行なわれたJリーグ1部の第3節ガンバ大阪対川崎フロンターレ戦の最中に、宇佐美貴史選手のアキレス腱は突如として切れた。彼の耳には「バッコーン!」という爆発音が聴こえたそうだ。相手のディフェンダが彼の踵を思いっきり蹴ったと思ったという。しかし、近くには誰もいなかった。
その時宇佐美選手は29歳10か月。ユースから所属しているガンバ大阪が「最高傑作」と呼ぶ逸材である。ドイツの名門バイエルン・ミュンヒェンに買われて渡独したが、欧州では飛ばず。古巣の大阪に舞い戻ってきたが、もし大怪我から復帰できなければ、すべての活躍が、以降は過去完了形で語られることになってしまう。
断裂したアキレス腱は元通りに治るのか。以前のように速く走れるのか。同じようにボールが蹴れるのか。また同じところが切れてしまわないか。プロとしての自信喪失。恐怖心との闘い。宇佐美選手が負傷したのをテレビで観て心を痛めた三浦知良選手から、入院先に花束を添えた励ましのメッセージが届いたそうだ。あのキング・カズから。お会いしたこともないのに。
一見何ごともなかったかのように、宇佐美選手は第31節の柏レイソル戦で復帰出場した。10月1日土曜日のことである。その後、チームは辛(から)くもJ2降格を免れたが、宇佐美選手の顔に笑みはなかった。
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