2017/07/24

パワーのないフォント-->


『文字を作る仕事』を読んだ。
著者は鳥海修(とりのうみ・おさむ)氏。
フォントデザイナーにしてフォントヴェンダー・字游工房の経営者である。
「ヒラギノ」には大いに世話になっているので、あまりけなしたくはないのだけれど……

『文字を作る仕事』(晶文社刊)は、第65回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した。
この程度の文章で賞がもらえるんやったら俺かて、と勇気が出てくるんである。
ごめん。






















本文フォントは文章を構成する部品であって、空気か水のような存在でありたい、という著者の思いは理解できる。
その思いを反映させたのが、字游工房オリジナルの書体「游明朝体」で、このフォントを採用しているのが『本の雑誌』である。

『本の雑誌』が長い間活版印刷にこだわっていたのは、よく知られた話である。
2003年3月号からオフセット印刷に移行した。
活字から写真植字になったわけである。
長年のファンからは総スカンをくった。
曰く「文字に力がなくなった」「(版面が)白っぽくなった」「薄くて読みづらい」……

いやいや写植になって格段に読みやすくなったやんか、とこちらは思っていた。
しかし、写植も廃れてDTPに移行するのである。
本の雑誌社編集部においても、InDesignに(まさかQuarkXPressということはあるまい?)字游工房のデジタルフォントを搭載して、レイアウト・組版をしていることと想像する。

「游明朝体」に関して思うこと。
それがまさに「文字に力がなくなった」「薄くて読みづらい」ということなのである。
メリハリがなく、視認性に劣ると思う。
自然に眼に入ってくる力がフォント側にないので、読む側に力む必要が生じるのである。