2012/02/27

マイナスをプラスに

実家を襲い、母の傘寿を祝う。
旅行にでも連れて行ってやりたいが、大したことはできず無念。
せめてもの思いで、過去の旅行の写真を表示できるデジタルフォトフレームを贈る。
コンパクトフラッシュとSDカードの両方に対応したS社の製品だ。
今を逃がすとCF対応の製品はもう手に入らないだろう。
予想以上に表示が美しい。

弟の嫁が赤い靴を贈る。
サイズ合わせが難しいものを贈るのは勇気のいることだ。

弟が買ってきたバースデイケーキでお茶を飲む。
主餐はビーフカレー。
二日前に来て、作っておいたものだ。
仕上げに市販のルウを入れるが、その他のレシピは偏固オリジナル。
味は……おおむね好評。

別の日。
TVで『お葬式』(伊丹十三作品、1984年)を途中から観る。
なんと、もう30年近くも前の作品か。
井上陽水の出演シーンを確認。
あらかじめ役柄を知っていなければ彼とはわからない。
白服の青木(津村隆)に井上佗介(山崎努)が「それでスクーピックを持ってきたのか」と言う台詞がある。
一般の人はまずスクーピックを知らないだろう。
青木は手持ちのムービーカメラで葬儀の準備を記録しているのだが、そのカメラの名前がScoopicなのである。
報道カメラマンが取材に使う16ミリのカメラ(Canon製)だ。
放送局でアルバイトをしていた頃に、払い下げてもらうつもりになっていたのだが、ふんぎりがつかずじまいになった。
Scoopicを手に入れていれば、ひょっとして今頃は映像作家だったかも……
青木が撮影した白黒の映像が本編に組み入れられているが、実際に撮影したのは写真家の浅井慎平であることが、エンドロールにクレジットされている。
余談だが、青木が劇中で運転していたMGのTタイプは伊丹のもので、浅井が譲り受けて現在も元気に走っていることを、別のTV番組を観て知った。

伊丹は『北京の55日』(1963年・米)や『ロード・ジム』(1965年・英)という作品に一三という芸名で出演している。
小林一三(いちぞう)の名をとったという話が伝わっているが、その名を十三(じゅうぞう)に変更したのは一(マイナス)を十(プラス)に変える意味があったという。
 

2012/02/26

遅い男

気分の落ち込みが激しい。
リスタートした再就職活動は連戦連敗。
2月の第1週に応募した施設運営・イベント運営の仕事は、一週間の書類選考のあと不採用。
第2週に応募した物流会社は、大雨のバレンタインデイにペーパーテストと面接試験があった。
その二日後に不採用。
第4週にはマンション管理会社の面接試験を受けたが、その週のうちに不採用となった。
死ぬほど憂鬱である。
こんな気持ちのままでは戦えない。

『遅い男』(原題:Slow Man、J. M. Coetzee著、鴻巣友季子訳)を読む。
図書館から借り出した本だ。
クッツェー(Coetzee)は2003年のノーベル文学賞受賞作家。
南アフリカ出身でオーストラリア現住の「南半球の男」である。
この小説の主人公が同世代の自転車乗りであることを知り、読む気をそそられたのだが、かといってそのことがさほど重要な作品要素になっているわけではない。
物語は彼が自転車に乗れなくなってしまうところから始まる。
原文では、
 The blow catches him from the right,
「衝撃が、彼を右側からとらえた……」と訳したいところだけれど、鴻巣訳は大いに趣きが異なる。
 

2012/02/13

8cm CDを読む

レイ・チャールズ『いとしのエリー』のジャケット裏















ラグビーフットボールの6か国対抗(シックスネイションズ)、イタリア対イングランド戦をTVで観る。
薄く雪の積もっているフィールドはスタディオ・オリンピコ・ディ・ローマだ。
名前のとおりオリンピックのメイン会場として建設されたスタジアムで、トラックが併設されている。
セリエAのフットボールチームであるASローマとSSラツィオのホームなのだが、ここでラグビーまで開催されるとは知らなんだ。
白線が見えないので、急きょ赤いペイントで線引きされている。
それが選手のシャツや顔について血と紛らわしい。
スコアは15-19でイタリアは敗戦。

「断捨離」とささやかな収益を兼ねてCDをPCにコピーして整理していたのだが、8cmのシングル盤の処理に問題が出た。
CD-ROMドライブが8cmのサイズに対応していない。
アダプターを装着しても、スロットローディング式のドライブでは認識されない。
つまり、トレイローディング式のドライブが必要という訳だ。

S社の製品で「Discman」というポータブルCDプレイヤーが自宅にあった。
このマシンで8cm CDを聴くことはできた。
PCに接続して音は出せそうだが、データ出力はできそうにない。

わずか十数枚のCDをリッピングするためにドライブを新調するなど、まったくあほらしい。
しばらく悩んで、思いついた方法は……!





このアダプターはスロットローディングには使えないので……

いらなくなったCD-ROMにドリルで「ミシン目」を打つ

ミシン目にそってくりぬく

ふちをやすりできれいに仕上げる

8cm CDをはめ込んで、セロファンテープで固定する

























































くりぬいた穴のふちをきれいに削るのに時間がかかったが、フットボールの試合を観ているうちに完成した。
おそるおそるスロットに挿入すると……、認識された。
金はなくてひまのある人間ならではのしわざである。
 

2012/02/09

ケヴィン・スペイシー

『セブン』(David Fincher作品、1995年)をTVで観る。
原題は「SE7EN」とつづり、SEVENと読ませたいらしい。
公開当時に日本でも大いに話題になった警察ドラマだ。
オープニングタイトルのデザインにたいへん刺激を受けた。

退職まで一週間の老練刑事役にMorgan Freeman。
新任の刑事役にBrad Pitt。
キリスト教の「七つの大罪」をモチーフにした連続殺人事件を捜査する。
七つの大罪とは、
・傲慢(pride)
・嫉妬(envy)
・憤怒(wrath)
・怠惰(sloth)
・強欲(greed)
・暴食(gluttony)
・色欲(lust)
である。
最初に警察ドラマと書いたが、ホラー映画の要素が強い。
若々しい風貌のKevin Spacey(公開当時36歳)が重要な役で出演している。
脇役ではRichard Schiff(『ザ・ホワイトハウス』で広報部長トビー・ジーグラー役)、Leland Orser(『ER緊急救命室』で外科のスタッフドクター役)の顔も見える。

寒風をついて、MTBで走る。
リッピングを終えたCDをBOOK・OFFで買い取ってもらう。
本とはちがって、タイトルを吟味するようだ。
MISIAも古内東子も杏里も稲垣潤一も、たったの5円。
なんと桑名正博のベスト盤が700円の最高値だった。
この日は13タイトル持ち込んで、合計1,840円。
生活費の足しにはならない。

市立の中央図書館に寄って、無料の映画鑑賞会に参加。
床が水平な視聴覚室に椅子を数十脚ならべて、スクリーンに映写する方式。
JBLのスピーカが奢られているが、片一方からしか音が出ていなかったのは残念。
この日上映されたのは『ペイ・フォワード』(原題:Pay It Forward、Mimi Leder作品、2000年)。
初めて観る作品だ。
レンタルビデオ店で借りて観られるものを、わざわざこんな所まで来て観る輩がいるものか。
20数名はいた。
老人が多い。
女性の二人連れ、夫婦……
暇はたくさんあるが、少しでもお金を節約したい人たち。
この映画会は頻繁に催されているように思えない。
平日開催という時間設定や、作品選定にこめられた意図は何だろうか。

『ペイ・フォワード』の出演者は、演技達者揃いだ。
・Haley Joel Osment……11歳の少年役。『シックス・センス』で有名。
・Kevin Spacey……少年が通う中学校の社会科教師役
・Helen Hunt……少年の母親役
『セブン』から5年後のKevin Spaceyは、まったく印象が異なる。
俳優だから当たり前だけれど。
Helen Huntも、彼女だと判るまでに手間どる。

映画が終わり、たった一人残ってエンドロールを観る。
途中で室内に点灯されてしまったので退室。
図書館を出て帰途につくころには、雪が降り出した。
 

2012/02/08

マーティン・シーン

Martin Sheenという俳優について。
彼を有名にしたのは『地獄の黙示録』(原題:Apocalypse Now、Francis Ford Coppola作品、1979年)の、黒塗りにした顔を沼から浮かび上がらせるCFだろう。

そこから遡ること6年。
『連続殺人警官』という最低最悪のタイトルの作品で彼を観て、好感を持った。
『コンバット』のサンダース軍曹役で有名になったVic Morrowとの競演だった。
原題はThe California Kid、Richard T. Heffron監督の1973年作品である。
カリフォルニア・キッドとはSheenが演じる主人公の愛車で、クラシックカーをチューンアップしてある。
この車は『アメリカン・グラフィティ』に出てくる黄色いT型フォードを彷彿させる。

そして最近『カサンドラ・クロス』(原題:The Cassandra Crossing、George Pan Cosmatos作品、1976年)をTVで観る機会があった。
Richard Harris、Burt Lancaster、Sophia Loren他の錚々たるキャストの中、Ava Gardnerの若い愛人役を演じている。
当たり前の話だが、次男のCharlie Sheenにそっくりだ。

TVドラマシリーズの『ザ・ホワイトハウス』(原題:West Wing、John Wells製作総指揮)でアメリカ大統領を演じていることはすでに紹介した。
本名はRamon Estevesというから、ヒスパニックと思われる。
 

2012/02/05

【J特】G大阪対HONDA FC


#15今野は「こんちゃん」と呼ばれていた

#7遠藤はゴール裏でマイペースの調整

子どもたちにモアイと呼ばれていたダミーのDFたち

















































サッカークリニックの「患者」さんたちの試合観戦を途中で抜けて、第一フィールドへ向かう。
この日、JFLに所属するHONDA FCを迎えて練習試合が行われた。
ガンバ大阪はハーフ二つにまったく別のチームを出場させたので、実質的には45分×2ゲームの構成となった。
午後3時にキックオフ。
ホーム側のゴール裏で観戦。
1stハーフは1-0(得点者:#11パウリーニョ)。
2ndハーフは1-0(得点者:#24星原)。
藤春が相手のFWに自陣ゴールライン際で激しくタックルして、膝を傷めて退場する事故があった。
#30エドゥアルド(ガンバ大阪の表記はエドゥワルド)に交替。
背番号4は縁起が悪い。

メンバーは以下の通り(ガンバ大阪のオフィシャルサイトでは未発表)。
フォーメーションは4-4-2と想定し、前線からGKまでを順に記す。
1stハーフ
#11パウリーニョ◆#20佐藤晃大
#14倉田秋◆#17明神智和◆#23武井択也◆#8佐々木勇人
#4藤春廣輝◆#15今野泰幸◆#2中澤聡太◆#21加地亮
(#29木村敦志)
2ndハーフ
#24星原健太◆#16大塚翔平
#13寺田紳一◆#無し(イスンヨルか?)◆#6横谷繁◆#19大森晃太郎
#27内田達也◆#3金正也◆#5丹羽大輝◆#30エドゥアルド
(GKは確認できず)

浦和レッズが湘南相手に5-1で大勝(1月29日宮崎にて、30分×4ゲーム)したことを思うと、寒い内容のゲームだった。
 

2012/02/04

【J特】G大阪・大人のサッカークリニック


女子部。試合前のミーティング






























































































フットボールの後進国がそれをサッカーと呼ぶような気がしてならない。
例えば日本、アメリカ、オーストラリア……
中国では「足球」と書くのだが、日本風に読めばソッキュウだ。
日本サッカー協会は「Japan Football Association」なのだから、フットボール協会と呼べばいいのに。
ともあれ、クラブがつけた名前がそうなので、サッカークリニックと書く。
われながらくどい。

MTBに乗って、万博公園まで走る。
途中、山田にあるスーパーマーケットにて食糧を調達。
クラブハウスサンドイッチ、ぶどうの入ったデニッシュ。
ICOCAで支払う。

スポーツ広場で行われる「大人のサッカークリニック」の一期生チーム対二期生チームの試合を観るのがこの日の目的だ。
女子部もあって、美女揃い。
ついカメラを向ける。

ガンバ大阪のコーチが教えてくれるクリニックで、参加資格は初心者(かつ55歳以下)なのだが、ゲームを観ているとけっこう上手な人が多い。
みんな楽しそうにプレイしている。
裾野を拡げるのと並行して、大人にもフットボールを浸透させると、ピラミッドならぬスピンドル形のスポーツ組織が生まれる。
 

2012/02/02

凍った月の涙

雪が降る日に生まれた息子のことを思い出す。
彼の健康を祈って「健」の字を入れて名付けた。
自分の息子の名に「康」の字を入れて応援してくれた人がいることは、あまり知られていない。

Jリーグのスポンサーになっている広告誌で見つけた求人に応募する。
InDesignで作ったオリジナルの履歴書に自己PR文を入力する。
署名だけ自分の手で書き入れ、顔写真を貼付する。
折らずに角2封筒に入れる。

MTBにまたがり、かつてのアルバイト先へ走る。
応募書類を発送。
友に贈る本も発送。
レターパックで送る方が安いことが判明する。
バースデイカードも発送する。
鉄道ファンの息子のために阪急電車の写真を使って作ったオリジナルのカードだ。

中央図書館に寄る。
この市の郵便局に勤めたおかげで、図書を借りられるようになった。
貸出券はまだ有効である。
ラウンジで『Casa BRUTUS』を読む。
1月10日発売の第143号は住宅特集。
薪ストーブのある、山小屋のような家に住みたい。

クッツェーの『遅い男』をPCで検索するが、所蔵なし。
AV視聴コーナーで『YUMING HISTORY』というCDタイトルを見つける。
聴いてみたいのだが、AV資料は貸し出さないのがこの図書館のポリシーらしい。
この日はあきらめて帰る。
途中のマーケットでアップルパイとピザパンを買う。

次の日、また図書館に行く。
MTBで走るので防寒策を講じる。
毛糸のワッチキャップ(watch cap、すなわち水兵が見張りに立つとき防寒のためかぶる帽子)を耳まで被る。
バンダナを三角に折り、マスクの代わりに着ける。
マフラーで襟を巻く。
レッグウォーマーを着ける。
上着は20年以上使い続けている、極寒地仕様のN-3B。
いったいいつになったらすり切れるのか。

『YUMING HISTORY』が聴きたいと申し込むと、席札とヘッドフォンだけを渡される。
番号の席に座り、ジャックに接続すると音が聴けるというシステムだ。
CDの本体もジャケットも手にすることはない。

荒井由実の天才を久しぶりに聴いて、涙が出そうになる。
本項のタイトルは「旅立つ秋」の一節である。