2016/11/14

『鷲は舞い降りた』オリジナル版


ハシゴ高村薫は小学校の三年先輩だった。
その事実を知る前に読んだ作品の舞台が近所だったから興味を持ったのだが、内容には感心せずに読み終わってしまい、それ以後一冊も読んでいない。
失敬な後輩である。




















『鷲は舞い降りた』オリジナル版の古本をAmazonで買った。
本体1円プラス送料257円、ドローン便で配達された。
というのは嘘で、メール便で届いた。
二つの版を比較するために実際に一字一句を読み合わせたわけではないのだが、短時間のうちに数点の相違を発見した。

登場人物のうちオリジナル版でリタァ・ノイマンだった名が、完全版ではリッターと変更されている。
同様にヴァルタァがヴァルターに、というように音引きを極力使わない「菊池光(みつ)節」がゆるめられている。
ウィロビイ卿はウィロビー卿とはならず、サー・ウィロビイになった。
アイルランド語で書かれた本のタイトル〈THE MIDNIGHT COURT〉が『ザ・ミッドナイト・コート』とカナ表記に変えられている。
完全版で『「カイエド・ミラ・フォルチャ」デヴリンがいった。』がオリジナルでは『デヴリンがなにかいった。』とごまかされていて、それがアイルランド語で「十万回の歓迎」であるという説明を、オリジナルでは「歓迎十万」としている点が違う。

登場人物のその後が物語のエピローグとして付け加えられているのが「完全」たる所以なのだが、この部分がなかったとしてもオリジナル版は不完全ではない、と断言できる。

組版は、完全版が一頁41字×18行(738字)であるのに対しオリジナルは43×20(860字)。
文字の大きさは前者が約12.7級(10ポイント相当)、後者は約11.3級(同・9ポ)である。
完全版は活字が大きく読みやすいというふれこみの〈トールサイズ〉だが、個人的官能としてはオリジナルの方が読みやすかった。


 

2016/11/11

入稿スタイル



『毎日新聞』2016年11月9日朝刊




















そうか……林真理子は原稿を手で書いているのだな。
手書きの原稿をファクスで入稿しているのだろうか。
そのことは作家自身のスタイルだからよし、としても新聞社側の担当者たち(入力・校正)は情なか。

ある人は、ワードプロセッサで打ち出したものをファクスで送稿していたらしい。
出版社がそれをまた入力し直しているという無駄を知って、データ入稿に切り替えたという。
目黒考二(北上次郎)だったと思うのだが、定かではない。


 

2016/11/10

『鷲は舞い降りた』完全版


『本の雑誌』に投稿したけれど、ボツになった原稿を復活。
 
△偏固ジャーナル忘月。
今さらやけどジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた[完全版]』を読んだんは、久しぶりに菊池光節を読みたかったからと、完全版てどやさという興味からである。

比較対照するべきオリジナル版が手元になく、図書館にもなかったので、ミニヴェロ(20インチのロードバイク)を駆ってダウンタウンへ探しに出かけた。
吹田・江坂駅前のBOOKOFFを襲うもヒギンズ作品はまったく姿なし。アシーネの大本と言うべき江坂店へ移動、次いでリブロへとジグザグに歩く。
新刊書店に絶版本があるはずもないがヒギンズもない。
再びロバぢゃなかったヴェロにまたがって北上次郎。
ホクジョウやっちゅうの(南下ゆうてけつかる!)

襲撃目標は天牛書店。
ここが最後の頼みだったのに、まさかのノー・ヒギンズ。
予定になかったポーラ・ゴズリング『逃げるアヒル』(ポケミス版)を買ってしまった。
これはスタローン主演『コブラ』の原作本。
棚の別べつの場所に二冊あったので値段を確認すると、同じ版ながら百円と百五十円だった。
高くて美しい方を買う。
この店で物色していて危険なのは、自分が以前売ったのを忘れている本がいまだにあって、趣味に合うのでまた買ってしまうことだ(爆)。
平成四年の『小説新潮』臨時増刊を見つけ、これも買う。
内容はAll about Shiina、表紙はミラーコートの裏使い。

ヒギンズはいったんあきらめて店を出る。
帰り道沿いに直木賞作家の家があるのでひやかす。
友人(同い年)の姉さん(三つ年上)が同級生だったというんで、作家が同じ小学校の先輩だと後年わかった。その作家とは……

(武田伴兵衛・続きはWEBで59歳プラス1・豊中市)