2022/11/12

古い本:シンプリー・パーム

『本の雑誌』には「三角窓口」以外にも投稿できる「読者アンケート」というコーナーがある。アンケートに回答して誌面に採用されると謝礼がもらえる。昔は掲載誌と図書券がもらえた。最近のお題「あなたの好きな創業者物語は?」に答えて送った原稿はボツになったのだが……このブログで復活。私の好きな創業者物語は、以下の本です。

 『シンプリー・パーム 理想のPDAを目指して』原題:Piloting Palm/アンドレア・バター、デビッド・ポーグ著/小林淳子訳/伊藤正宏(パーム航空・機長)監修/ソフトバンククリエイティブ

技術的には優れているのにマーケットの事情によって消えていかざるを得なかったモノたちがあります。ベータマックス(by SONY)然り、PHS(Personal Handy-phone System)もまた然りです。二十一世紀に入ってすぐの頃、私は二つ折りにしたPHS機をズボンのポケットに入れたまま、左手に持ったPDA(Personal Digital Assistant)でメイルチェックやウェブの閲覧をしていました(この時、PDAとPHSはBluetoothによって無線接続されている)。PHSをデータ通信用のプラン(実は音声通話もできる)で契約していたので、通信費は月額九百八十円ぽっきりでした。

『シンプリー・パーム』はPalm(たなごころ)と名付けられたPDA(およびその基本ソフトウェア)を開発したジェフ・ホーキンスと仲間たちの波乱万丈の創業物語です。禅に影響を受けたホーキンスの設計思想は「PC的でないものを作る」であり、それは、ポケットに入ること・素早い起動・簡単な操作・高コスパ・長寿命電池・PCとの簡単連携、という製品コンセプトに反映されました。Palmは熱狂的に受け入れられて、IBM社にOEM供給されたり、SONYが互換機を作ったりして日本国内でも一大ブームを形成したのですが、スマートフォン(PDAと同等のサイズで、電話とカメラ機能の付いた超小型コンピュータ)の登場によって絶滅してしまったのは、読者の皆さんもよく知るところでしょう。


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