最近、連続してエセーを読んでいる。伊丹十三から五木寛之へ、そして北上次郎こと目黒考二の『息子たちよ』(早川書房)である。自称・翻訳ミステリ応援団として、その方面の作品ばかりを読んでいる日常からすれば異例のことだけれども、急逝した作者を偲んで、本箱から引っ張り出してきた。家族向けの『プレジデント・ファミリー』誌に連載されていたものを、まとめたものである。二人の息子に対する思い(息子たちよ)をブックガイドに事よせて、あるいはその逆かもしれないが、書かれたものであり、子どもと親の関係がテーマであるからして、目黒考二であるべきところ、北上次郎名義で書かれたものである。『息子たちよ』というタイトルは『女たちよ!』を、まねたのかもしれない。
ちなみに、角川文化振興財団主催の第2回城山三郎賞の候補作となった『昭和残影 父のこと』(KADOKAWA)では、ホン・ミョンボぢゃなかった本名の目黒名義で父君の周辺を書いているので、二作合わせて『目黒家の人びと』上下巻が成立する塩梅である。
『息子たちよ』の中で紹介された作品に『湖は餓えて煙る』(原題:Starvation Lake/ブライアン・グルーリー著/青木千鶴訳/ハヤカワ・ミステリ)がある。ブライアン・グルーリーなんて今まで聞いたことがない名前だ。この邦題は、まったくいただけない。読みにくいし、憶えにくい。「みずうみは・うえて・けぶる」なんて、そも意味が判らんではないか。Starvation Lakeはアメリカ・ミシガン州にある湖の名前である。こういう時こそカタカナで『スターヴェイション・レイク』とすればいい。水上勉風に『飢餓湖』でもいいではないか。ともあれ読みたくなって、隣市の図書館から借り出した。2010年9月の初版本は、手垢や折り癖がついておらず、とてもきれいだった。私の勘では、おそらく一回しか貸し出されていない。
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