2023/01/13

手帳物語・2

(承前)

1982年の最後に観た映画は『E.T.』だと手帳に記録してある。12月4日土曜日、小屋は大阪・東梅田のピカデリー1である。当時勤務していた印刷会社は週休2日制を、まだ採用していなかったので、退勤後に観に行ったのだろう。

大阪の駅前の、その下に蜘蛛の巣のように張り巡らされた地下街があって、東のドン突きから上がったところに「松竹会館」があった。この辺りには郵政省が所有している不動産が多くあり、松竹会館が入るビルも「梅田郵政互助会ビル」というのが正式な名称だった。会館の中には梅田松竹・梅田ロキシー・ピカデリー1・ピカデリー2という四つの劇場が入っており、今でいうシネマコンプレックスの縦積みヴァージョンだった。

親会社の松竹が印刷会社の得意先であり、私が担当営業マンだった。その役得で、劇場にフリーで入場できるパスを預かっていたのである。映画ファンの自分にとって、この上ない幸せであったが、多忙な時期だったので、あまり利用する機会はなかった。ただし一度だけ、観に入った作品がつまらなくて途中で退席して、別の階の劇場に入りなおしたことがあった。パスがなければ、できないことである。

ピカデリー1で観た『E.T.』が19本目で、17と18本目が『天国から来たチャンピオン』『シャーキーズ・マシーン』と書かれている。日付は12月1日・映画の日。この頃から映画の日に入場料の割引が始まっている。小屋は大毎地下劇場。いわゆる二番館なので、もともと入場料は安かったはずである。

大毎地下劇場の大毎とは、大阪毎日の略称である。劇場の入り口のあった堂島地下街から地上に出ると、そこには毎日新聞大阪本社の建物が立っていたのである。

『天国から来たチャンピオン』(略して「天チャン」と呼んでいる)は1978年製作のアメリカ映画で、我がオールタイムベスト20に入る作品である。付録のようなものだった『シャーキーズ・マシーン』は1981年作で、バート・レノルズ主演・監督の刑事もの。

ちょっと待て。12月1日は水曜日ではないか。仕事が終わってから二本立ての映画を観に行く余裕があったのだろうか。

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