2017/08/27

ケニヤの紅茶に恋して-->


母がケニヤを旅したときの土産だから、十年以上前のことである。
その土産というのは、紅茶だった。
袋をあけてみると、いかにも安っぽい「粉茶」だったので、
「こんなもん、いらんわ」
と言って、突っ返してしまったのだ。




























とにかく色濃く出せればいい、というティバッグの中身のような茶だった。
見かけは、である。
後日、実家の母がいれてくれたその紅茶の味に、打ちのめされた。
柑橘を彷彿させる香りと味を備えているが、それはアールグレイのように香り付けをされたものではなく、茶だけの味である。
紅茶を専門に飲んできた何十年間で、初めて経験する味だった。
今まで飲んだことのあるどの紅茶よりも、おいしいのである。

母に平身低頭して、残りの茶を譲ってもらい、飲み続けた。
ストレイトの抽出液は濃度が高く、ミルクティにしても充分楽しめる。
そして、風味が爽やかである。
一度飲んだらやめられない、麻薬のような……
ひょっとして、ケニヤの茶葉は麻薬の成分を含むのか?

茶の木は、寒暖差が大きくて比較的湿潤な高地を好む。
条件が合えば、インドでもスリランカ(セイロン)でも、ケニヤでもいい紅茶ができるという理屈である。
しかし、ケニヤの紅茶の味わいは、他の土地のものとは、まったく異なる。

大きな問題は、もらった袋の紅茶を全部飲んでしまったら、補充がきかない、ということだった。
ケニヤに買いに行く以外、方法はないのか?
というわけで、国内でケニヤ紅茶を扱っている業者を探す旅が始まったのである。

大阪・堂島に店のあった「ティハウス・ムジカ」が袋売りしていた紅茶の中に「アフリカン・ジョイ」というものがあった。
中身はケニヤだということなので買って飲んでみた。
インド産といっても通る味だった。
つまり、国内に出回っている一般的な紅茶と変わらない。

それ以来、紅茶の袋の原産国名表示を見て回る日々が続いた。
二年ぐらい前、成城石井ストアで「fine KENYAN HIGH GROWN LOOSE TEA」を見つけた。
「Williamson Tea」というブランドで売られている輸入品である。
これが、かなり母の土産の味に近かった。
今月、阪急・岡本駅近くの雑貨屋で、偶然Williamson Teaを見つけた。
今回買ったのは「HIGH GROWN KENYAN LOOSE TEA」と少し名前が異なる。
味は、自分が求めているケニヤのものとは違った。

今年になって、ドンピシャの味を提供してくれたのが「ひし和」である。
ティバッグとCTC(葉を粒状に丸めたもの)でケニヤ紅茶を販売している。
ティバッグの方を飲んだら、求めているケニヤの味だった。
やっとたどり着いた。

ところが。
ティバッグを全部使い果たし、CTCを買って飲んだら、普通の紅茶だった。
あわててティバッグの方を買い直して飲んだら、こちらも普通の紅茶だった。
そんな阿呆な……
プルクワ?

ケニヤ紅茶を探す旅は、また振り出しに戻った。


 

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