2017/06/30

熱烈歓迎復職ジョン・リーバス-->


終わったと思っていた探偵小説のシリーズが復活するほどうれしいことがありますかっ。
シャーロック・ホームズの帰還、しかり。
イアン・ランキンのジョン・リーバスの復職、しかり。

リーバスはスコットランド警察のどこだったかの犯罪捜査部に、かつて所属していた警部である。
どこだったか……のところが曖昧なのは、リーバスがあちこち異動していて、ここに羅列するのは不可能だからだ。
そもそもシリーズの全作が翻訳されていないのだから、その間にリーバスがどこにいたか、わかったものではない。

『他人の墓の中に立ち』(ハヤカワのポケミス)を最後に、作者のランキンはリーバスを退職させて、物語のシリーズも終わった。
終わったはずだった。






ランキンはその後、同じスコットランド警察を舞台にした新しいシリーズを書き出した。
そのはずだった。
新シリーズの主人公はマルコム・フォックスという名の警部補で、内部監察室に勤務しているという設定だった。
こちら側の作品は、別の訳者によって別の出版社から出されたのである。

いかんせん、マルコム・フォックスは物語上の嫌われ者(警察の警察)というキャラクターもあって、ジョン・リーバスの人間的魅力を上回れなかった。
そこで作者としては、幸いにして舞台が同じスコットランド警察の中だったので、マルコム・フォックスのシリーズにリーバスを登場させて、料理にスパイスを効かせようとした。
というのは、わが想像だけれども。

結果的にはリーバスが主人公の新作『寝た犬を起こすな』がハヤカワのポケミスで出て、マルコム・フォックスのシリーズの方が吸収されたのである。
横道にそれるが『寝た犬を…』というタイトルはあかん、と思うのである。
原題は『Saints Of The Shadow Bible』。
聖人たちというのはリーバスを含む、昔警察官だった人たちのことで、影の聖書はシャドウ・キャビネット(影の内閣)と同様の、表には出ない書物のことである。
すなわち、個人的には『影の聖人たち』でええやないか、と思っているのである。

マルコム・フォックスの人物描写について。
訳者が変われば、これほど変わるのか、というほど別人の感がある。
勤務先も「監察室」だったのがハヤカワ版では「苦情課」になっている。
元のワードは同じ「complaints」のはずなのだが……

それはともかく。
ご都合主義であれ、こちらとしては大歓迎なのだが、リーバスは警察に復職。
マルコム・フォックスと対峙する。
リーバスがボケて、フォックスが突っ込む。
こういう図式であれば、フォックスが生きる。
そう作者は気づいたのではないだろうか。
 

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