2017/04/06
ペナンブラ氏の24時間書店-->
四月になったばかりだというのに、もう2017年のベストと言える作品を読んでしまった。
『ペナンブラ氏の24時間書店』(ロビン・スローン著、東京創元社刊)である。
たぶんツイッターだったと思うのだけれど、話題にのぼっていたのを見て、読んでみる気になった。
最寄りの図書館のウェブサイトで検索すると、意外にも予約している人の数が少なかった。
しめしめ、まだあまり知られていないのか、と思って即予約ボタンをクリックした。
図書館からメイルで知らせが来て、借り出しに行った。
てっきり新刊と思っていたのに、手垢のついた本だった。
もう少しよく調べていればわかったことだが、SNSで話題になっていたのは、文庫化されたものが発売されたというニュースで、自分が手にしたのは、その元の単行本だったというわけだ。
予約の列が短かったのは当然だ。
単行本は2014年4月発行。
3年前には、その存在にまったく気づいていなかった。
こんなにおもろい本を、当時なぜスルーしてしまったのか……
それは、まあいい。
いま読めたんやから。
1980年代の後半に、印刷の仕事に手を染めていた人間には、懐かしい名前が登場する。
本文では「アルドゥス・マヌティウス」と表記されているが、当時われわれは「アルダス」として、その名を知っていた。
アルダスはコンピュータ用のソフトウェアアプリケーションを作っていた企業で、「PageMaker」というアプリケーションは、DTPソフトのさきがけである。
DTP(DeskTop Publication)という言葉自体、アルダスが作ったものである。
アルダス社の名前が、15世紀の出版印刷人であったアルドゥス・マヌティウスに由来することは、言うまでもない。
何百年も前に亡くなったアルドゥスやその協力者が、もの言わぬ「主役格」として、お話に登場してくるのだから、興味がわかないわけがない。
瞬間的ではあるが、村上春樹、kobo、という名前まで登場する。
本が好きな人、印刷に興味がある人、コンピュータに関わっている人が読んだら面白いと思えるだろう。
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