2019/11/06
N-3Bもどき
「N-3Bジャケット」というものを買った。
ユニクロブランドでカンボジア製、本来7,990円のところ、4,990円に値引きされて売られていた。
N-3Bは偏固ジャーナルに、よく登場するアイテムである。
米国の軍用仕様(ミルスペック)に従って作られた、防寒用のコートの一つである。
MA-1というのも、よく耳にするスペックナンバーだが、これはパイロット用の短ジャンパーのことで、短い衿と袖口がリブ編みである。
N-3Bは尻を覆うほどの丈の長さで、縁にボアのついたフードが付属する。
こちらも袖口はリブだが、リブを袖が覆う仕立てになっている。
N-3Bを丈だけ短かくしたものがN-2Bである。
N-3Bは、またの名をアラスカンコートといい、極寒地で寒さをしのぐために開発されたものである。
寒がりの私は、30年前のある日、西心斎橋の服屋で一着買い求めた。
ミルスペックに沿った衣料品の有名ブランドには、AVIREX(アヴィレックス)、ALPHA(アルファ)、Buzz Rickson(バズ・リックソン)などがある。
いわゆる軍の放出品なのだが、民間人のファッションアイテムとして人気を得たのである。
私が購入したN-3Bは紙製のタグが縫い付けてあるだけの、いわゆるノーブランド品だった。
価格は3万円。
有名ブランドよりは、かなり安い買い物だった。
軍国主義などと批判を受けることがある。
なにゆえに、戦争服を着るのか。しかも、かつての敵国のものを。
自分としては、たんに機能を重視した結果の選択だったのである。
軍の要求するスペック(耐寒性、耐久性や、それらに関わる材質等)は非常の厳しいもので、そこから生まれた私のN-3Bは、なんと30年の使用に耐えたのである。
まさか、30年の使用に耐えうること、という仕様ではなかったであろうが、一気に力尽きて朽ち果てるような最期だった。
さて、ユニクロの「N-3Bジャケット」である。
つまるところ、ミルスペックに則っていないはずのものが、N-3Bを名乗ってはいけないのである。
N-3B「風」ジャケット、とか、N-3Bジャケット「もどき」、が相応しい。
そういうことを言っておきながら、値段の安さに負けて、買ってしまった。
やっぱり、見るからに温かそうでもあるし。
消費税込みで5,489円。
30年前のN-3Bの、約6分の1だから、5年保ってくれれば御の字である。
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